絶縁用封止材として使われるエポキシ樹脂硬化反応の解析：第1報 硬化反応の速度論的解析

摘要

エポキシ樹脂は最も広く利用されている熱硬化性樹脂のひとつである．エポキシ樹脂の硬化反応が容易に進むことと，力学的強度，電気絶縁性，熱安定性などの良好な材料特性から，接着剤や電機·電子部品の封止材として広く用いられている．電気·電子部品用途の中でも特にトランスは，コンピューターサーバー用電源のための小型化·薄型化への要求や，ハイブリッドカーに搭載する場合における軽量化などの要求がますます高まってきている．一方でこれらの用途に対して，さらに高い信頼性が要求されてきている．小型化，薄型化，軽量化が要求されるトランスでは，封止材であるエポキシ樹脂をより薄くすることが特に求められている．繁用エポキシ樹脂は充てん後の硬化反応において収縮が避けられない．それだけでなく，反応中の発熱やその後の冷却による熱ひずみも加わる．さらに，エポキシ樹脂は硬化反応中に，液体から固体へと連続的に変化するために力学的特性が非常に複雑に変化する．これらの理由のために，硬化中のクラック発生や硬化後の残留応力の問題が大きく，エポキシ樹脂硬化に伴う成形不良の解決は非常に難しい．この解決すべき成形不良のために，エポキシ系接着剤の体積収縮による接着強度低下に注目した報告をはじめ，ICパッケージング材としてエポキシ樹脂が使われる場合のき裂やはく離の発生について研究されてきた．さらにエポキシ樹脂が充てんされるときのボイド発生も大きな問題であった．