磁性粉末－ポリマー複合体のプレス成形におけるシランカップリング剤の添加効果

摘要

最近では，この磁性粉末－ポリマー複合体が示すノイズ抑制効果のさらなる向上が望まれている．ノイズ抑制効果は高周波での磁化のしやすさを示す複素透磁率に依存する．磁性粉末－ポリマー複合体の複素透磁率を向上させるためには磁性粉末の比率を高くする必要がある．ところが，高充填化すると混練時に磁性粉末－ポリマー複合体の粘度が高くなってボイドが生じるため，ボイドを減少させる必要がある．本研究はボイドによる成形欠損を減らし，高充填化すことを目的に行った．一般的にボイドを減少させるためには，凝集している磁性粉末をポリマーバインダーに均一分散させることが必要であり，そのためには磁性粉末とポリマーバインダーの親和性を強くすることが有効である．そこで本研究では磁性粉末とポリマーバインダーとの親和性に着目した．磁性粉末をカップリング剤で表面処理を行い，表面を改質してポリマーバインダーとの親和性を高める検討を行った．カップリング剤は官能基に依って親和力が異なることが知られている．これらの影響を調べるために磁性粉末の表面処理には，カチオン系，アミノ系，エポキシ系，ビニル系，メタクリロキシ系，およびエポキシ系のシランカップリング剤（以下，シラン剤と略す．）を使用した．高充填の評価としては，磁性粉末とポリマーバインダーそれぞれの比重の差異を利用した．すなわち，はじめにボイドがない場合の理想比重を算出した．その後，実測比重から高充填化の指標としてボイド率を求めた．