食料農業植物遺伝資源国際条約「農民の権利」概念に基づく 作物遺伝資源の持続的利用

摘要

2004年6月に発効した食料農業植物遺伝資源国際 条約は，農民が貯蔵した種/-及びその他の繁殖性の材 料を保存，利用，交換及び販売することや食料農業植 物遺伝資源の利用に関する意思決定及び当該資源の利 用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に参加するこ とを主な内容とする「農民の権利」について認めてい る国際的約束である. 本講演では，一般に知的財産権の観点から議論され る「農民の権利」について，生業としての農業の視点 を踏まえて概念の背景と内容を整理する.特に，「農 民の権利」実現に関する関係者による意見を基に，遺 伝資源の価値をどのような観点から把握するか，また 農家の視点から価値をとらえた場合の特に地域に根差 した活動が持続できるための組織制度の設計はどのよ うになされるべきかについて議論する.