周期定常性に基づく複数信号識別法の空間チャネルエミュレータを用いた特性評価実験

摘要

周波数共用環境において周囲の電波利用状況を認識する技術として，周期定常性に基づく信号検出技術があるが，受信電力の異なる複数の信号の検出においては，特に弱信号について十分な検出精度が得られないという問題がある．これまでに筆者らは各信号に対する検定において他の候補信号の影響を適切にキャンセルする複数信号識別法を提案し，従来の検出法では強電力信号の影響で検出できなかった微弱な信号についても高い検出率が得られることを，計算機シミュレーション及び有線接続での基礎実験により確認してきた．本稿では，より現実的な環境を実験系により構築し，複数信号識別の特性を評価する．複数の信号が異なる伝搬特性を伴って到来するシナリオを電波暗室内に再現するため，空間チャネルエミュレータを用いる．更に端末型の非無指向性アンテナを要信アンテナとして用い，端末の向きを変えることによって，到来する複数の信号間の電力比が変動する場合の信号検出特性を評価する．実験結果より，筆者らの提案する複数信号識別法は，複数の到来信号間の電力比が大きく変動する場合にや，各信号を精度良く検出可能であることを示す．