湛水開始時における水田土壌浸透水中の溶存態有機物の挙動

摘要

農業地域での地形連鎖を利用した水環境保全の中で水田が水質浄化の場として着目されている．水田が窒素除去能力を持つことは広く知られているものの，水田からの有機物負荷に関する知見は少ない．水田では保肥性を高めるために藁などを土壌に鍬込むため，水田土壌には腐植酸などの有機物が多く含まれている．　腐植酸に代表される難分解性有機物は湖沼でのCODの環境基準達成率が上昇しない原因物質であるとの指摘がある（今井，2002）．また，霞ヶ浦では，流入するCODの約10％が農地由来との報告がある（国立環境研究所，2001）など，農地からの有機物負荷に注目が集まっており，水田内での難分解性物質の動態解明が急がれる．　本報では水田土壌の作土層の未擾乱土壌コアサンプルを使用して，三次元励起蛍光スペクトル法によって用水が作土層に浸透する際の有機物の濃度変化を追跡した．