漁港施設の津波被災の特徴と耐津波設計への取り組み

摘要

東日本大震災では，東北地方太平洋沿岸を中心に水産関係に甚大な被害が発生し，その被害総額は1兆2千億 円を超えた。特に，簾源に近い北海道から千葉県の7道 県は，我が国の漁業生産量の約5割を占める水産業が活 発な地域であり.津波による漁業、水産業への被害は極めて甚大なものであった。このうち漁港の被災は.北海道から千葉県の7道県で319漁港（被害額8230僮円）で あり，その数は全国の漁港総数の1割に相当し，被災の 大きかった岩手県，宮城県，福島県に限れば全263漁港 のうち260漁港が被災した。その数，規模.被災バタ ーンともにこれまでに類を見ないものである。このよう に，これまでに経験したことのない規模の被害が漁港施設に発生したのは千年に一度と言われる最大クラスの津 波が来襲したことに加え.漁港施設ではこれまで津波を 明示的に設計外力としていなかったことがその原因として挙げられる。これを受け.水産庁は2012年4月に津波 に対する漁港施設の設計方法の基本的な考え方2)を打ち 出しているが，その詳細や実験的な裏付けについては今 後の課題とされていた箇所もある。