歩行開始時より跛行を呈した股関節へモジデリン沈着性滑膜炎の症例

摘要

原因不明のへモジデリン沈着性股関節炎を経験した.4歳男児で，1歳から跛行があり， 4歳まで続くために来院した.初診時跛行と左股関節外旋可動域制限があった.血液検査は正常で あつたが，単純X線で左大腿骨骨頭に骨透亮像がみられた.単純MRIでは関節液はなく，骨頭に Tllow, T2 isoの所見があるため，ペルテス修復期の診断となり，免荷と可動域訓練を行って経過 を診た.しかし，痛みと可動域制限は改善せず，骨頭と臼蓋に単純X線で骨透亮像の増加と造影 MRIでTl low, T2lowの所見とその周囲が造影される所見があり，へモジデリン沈着性関節炎の 診断で，股関節切開術を行った.骨頭周囲にへモジデリンが沈着し，滑膜も増生していたが，リン パ球の浸潤像や泡沫細胞はなかった.術後はギプス固定後長下肢免荷装具とした.術後5年経過の 現在，へモジデリン沈着性股関節炎の原因はわからなかったが，跛行は改善し，単純X線で大腿骨骨頭はほぼ球形になった.