小児上腕骨近位部骨折の検討

摘要

当施設において2004年から2013年までの10年間に治療を行った，小児上腕骨近位部 骨折の8例8肢(男児5例?女児3例)の特徴と治療成績を検討した.骨折型は骨端線損傷が6例で， Salter-Harris分類1型1例，2型5例であった.骨端線損傷を伴わない骨幹端部骨折は，2例であつ た.骨折部の転位度はNeer-Horowitz分類で評価し，1度力3例，2度が3例，3度が1例，4度 が1例であった.治療は保存療法を5例に，徒手整復+鋼線固定を3例に行った.手術療法は Neer-Horowitz分類の2度の1例と3， 4度の全例に対して行った.経過は保存療法，手術療法と もに全例良好で，早期に骨癒合がみられ，外観の変形や日常活動制限を呈した症例はなかった.小 児の上腕骨近位部骨折や骨端線損傷は比較的まれな骨折である.上腕骨近位部は骨折部の良好な骨 癒合能と自家矯正能を有しているため，治療法では保存的治療を選択する症例が多い.手術適応は， 骨折部転位の許容範囲を判定することが重要となる.自験例においては全例で良好な治療成績を認 めており，治療法の選択が適切であつたと考えている.