交雑種（黒毛和種×ホルスタイン種）雌牛による効率的な子牛生産に関する研究

摘要

肉用交雑種（黒毛和種×ホルスタイン種）雌牛は，需要の増加に伴い，飼養頭数が増えているが，その効率的な繁殖牛としての利用方法は知られていない。そこで放牧飼養による低コスト肥育素牛生産における可能性を検討するために，親子放牧下での交雑種雌牛の単子および双子晴育と繁殖性能，親子放牧下での交雑種母牛の晴育能力を分析した。しかし，効率的な子牛生産を行うための双子生産では，分娩時の事故による子牛の損耗率がきわめて高い。この間題点を解決するために，周産期における生理変化の特性や母子の相互作用を捉え，双胎妊娠牛の膣温連続測定および解析と妊娠末期胎子血液の採取方法の開発によって分娩予知のための基礎データを蓄積し，双胎妊娠牛の膣温連続測定による分娩時の事故を防ぐ看護を効率的に行う分娩予知技術を開発した。さらに，交雑種母牛の夜間給餌による分娩時刻制御によって，安全で簡易な飼養管理による分娩時刻制御方法の確立を試みた。　その結果，交雑種を母牛とした親子放牧で，単子哺乳子牛の晴育においては補助飼料無給与でも優れており，双子晴育は可能であるが，分娩後母牛の体重減少が顕著な草地においては，母牛への補助飼料給与も必要と考えられた。また，双胎妊娠末期牛の生理的特徴は，双胎と単胎妊娠牛の膣温には差がみられず，雄胎子同士の双子と雌同士の双子の場合，子牛の体重の和は母牛の膣温と強い正の相関がみられた。周産期の内分泌的変化を母子相互作用から検討するための，採材技術を確立した。分娩前の腔温低下から分娩予知技術の開発を検討したところ，高い確率で分娩予知が可能であった。さらに肉用牛の分娩時刻は給餌時間や飼料構成によって影響を受けることが示唆され，ストレスを与えることなく，比較的短時間で食べきることができる適切な飼料を夜間に与えれば，牛の昼間分娩率は高くなることが明らかになった。