歩行時の下方視覚情報への依存における加齢効果：眼球運動の時系列的変化

摘要

本研究は，歩行者がどのように周囲の環境，特に下方情串鋸こ注目しているのか，またその加齢効果について歩行時の視線の時系列的変化から明らかにすることを目的とした．歩行時にどのような眼球運動の振る．舞いが見られるのかについて，平坦な廊下，スロープ，階段の3種の歩行空間で高齢者と若齢者の比較から検討を行った．その結果，1．高齢者は床や足元に視線をより長く向け，特に床上での変化点に長い時間注目する．2，高齢者は下方を見る場合が長くなるにつれ視線の上下動が少なくなり，老齢者と対照的な傾向となる，などが明らかとなった．以上のことから，歩行速度や歩調に差がなくとも高齢者は若齢者と比校し，より下方情報に依存しており，歩行時の視覚情報受容法の違いが明らかとなった．また高齢者の下方への視線配置は，自身の足の運びまでを含む下方の情報の取得であることが明らかとなった．