細胞進化モデル生物図鑑第2回酸素のない環境に生息する真核生物の細胞膜および食作用にまつわるエトセトラ原始真核細胞モデル：嫌気性原生生物

摘要

真核生物は細胞膜中にトリテルペノイドの一種であるステロール（図1）を有している。また，真正細菌の一部は細胞膜中に同じくトリテルペノイドの一種であるホパノール（図1）を持つことも知られている。ステロール，ホパノールともに細胞膜の「補強材」としての役割を果たしているが，さらにステロールは真核生物における細胞膜の柔軟性維持にも大きく関与している。ステロールは細胞膜リン脂質二重層の片方からもう片方へ移動する，いわゆるflip-flop（図1）を行うことができる。これにより，リン脂質外層と内層の表面差を自在に変化させ，結果として真核生物特有の現象である食作用（ファゴサイトーシス）を行うことが可能となる。一方，ホパノールはステロールとは異なり構造上flip-flopが行えず，したがって真正細菌において食作用は基本的には認められない。この真核生物の食作用は，ミトコンドリアの獲得においても重要な役割を果たしたと考えられている。