日本学術振興会先端研究拠点事業-拠点形成型--医学物理研究教育拠点の形成-

摘要

がんが増えており、2人に1人はがんに羅患し、3人に1人はがんで死亡している。したがって、がん対策は国民的重要課題である。がん治療には手術、放射線、抗がん剤がある。がん死亡率の増加とともに、放射線治療を必要とする患者数も急速に増加してきている（図1）。しかし、新規がん患者に対する放射線治療の適用率は欧米の約50-70％に比べてわが国は2009年で27.6％ に留まっている。このことは日本では約3～ 4割の患者さんが放射線治療の恩恵を受けていないことになる。放射線治療は優れた治療成績と高いQOL（生活の質）を達成できる治療法である。しかし多くは加速器を用いるので、適切かつ安全に治療するには、①放射線の専門知識②加速器の品質保証·管理、③研究開発能力が要 求される。これらの能力を備えた職種が医学物理士Medical Physicistである。わが国では実質マンパワーとしては約110人しかおらず、米国の約4000人に比べて極端に少なく、その職域と教育システムはいまだに確立されていない。幸い2008年から文部科学省がんプロフエッショナル養成プランにて他の専門職種とともにその教育の充実が図られ、「医学物理士コース」を設置している。本プラン全体の概要は大阪大学、松浦成昭教授の本誌での寄稿に詳しいのでそちらを参照いただきたい（第63巻第2号：119-122，2011）。