わが国の魚類養殖の展望と種苗生産技術

摘要

1 養殖の技術的構造内水面おょび海面の養殖の技術にっいて簡単に説明したい。養殖の構成要素は通常1)種苗,2)環境,3)餌とされているがもう一っ4)人をあげておきたい。養殖用の種苗は,本来ならば,育種にょって高成長,高い耐病性,商品価値の高い形質などを具備した品種が用いられるはずである。水産養殖の現状は,食用のコイを除き,いまだ品種改良,品種固定,品種登録などは遅れており,養殖種苗としては不完全のままである。養殖そのものは,中国において2000年の歴史があるが,全体としては農業,畜産業に比して育種にょる品種改良は遅れており,いまだ緒に就いたばかりである。それょりも淡水養殖と海面養殖の代表でもあるウナギ,プリともに天然の稚魚を捕獲して,中問育成し養殖種苗として用いているのが現状で,本来の養殖を考えると前途遼遠である。飼育環境は地下水,湧水を用いたマス養殖,湖でのコイ網生簣養殖,ヒラメの海水陸上養殖,多くの海産魚の海面網生簣養殖,クルマエビの網仕切り,築堤式養殖など養殖形態にょり多様であるが,最近増えてきた循環式陸上養殖以外は,最適な状態に飼育環境を制御することはできない。海面養殖の主体である網生簣養殖では,養殖で発生する環境ヘの汚染負荷のすベてを海の自浄能力に委ねている。餌にっいては,最近になって,内水面,海面ともに完全配合飼料化が進んでいる。ただ,魚類の配合飼料の主たる組成である魚粉の価格高騰からも,少しでも飼料効率の良い品種の開発,普及が強く望まれている。人,っまりは養殖業者にっいては,養殖に関わる経験や専門知識をもたずに,後継者として養殖に携わる者が増えており,また,後継者不足も重なり前途はかなり厳しい。水産分野における社会人教育制度の確立が急がれる。