日本産十脚甲殻類の幼生(20)イセエビ下目(4)発育段階と亜科?羼の検索

摘要

今回はイセエビ下目の発育段階と,属または亜科レベルの検索を扱う。わが国に産する種の検索について,これまでの文献としてはSekiguchi506)もあわせて参照されたい。本下目ではプランクトンによる幼生記載が先行した関係もあり,初期フイロソーマの情報が少なく,これまでの検索はデ一タの蓄積が多い中期?後期が主になっている。また,水産重要種以外ではあらかじめ種がわかっている人工飼育によるデータに乏しい。プランクトンの形態による同定は常に種同定上の問題を含み,このような土台の上で検索表を作るのは困難を伴うものである。しかし近年,DNA解析による同定技術が導入された結果,たとえばプランクトンで採集されたゾウリエビ属の後期フイロソーマについて種名が確定されるなど483),徐々にではあるが,種同定の問題は解決に向かっている。このように,イセエビ下目に限ったことではないが,今後のプランクトンにおける種同定の確度が上がり,ふ化飼育によるデータが増えることで,より現実に合った検索表が提示されていくものと期待される。