60年前の「世界の頭脳」の仙台訪問-1枚の記念写真から

摘要

フロロ一ク2012年秋,東北大学金属材料研究所(金研)強磁場超伝導材料研究センタ一の渡辺和雄教授あてに,グルノ一ブルにあるフランス国立強磁場施設のジ一ン?ルイス?ト一レンス博士から1枚の写真が添付された電子メ一ルが送られてきた(第1図上.ただし,掲載の写真は送られてきた写真と同一のもので金研に保管されていたプリント版である.送られてきた写真には,フランズ語で撮影時期,場所と写っている人の名前などが印字されていた).ト一レンス博士は,磁性物理に関する理論研究者であるが,すでに現役は引退されている.同じグルノ一ブルの磁性研究で有名なネ一ル教授に関する資料を整理していて,この写真を見っけたそうである.この集合写真の背景は,金研本多記念館の正面玄関前である.前列左から3番目の増本量所長(当時)を中心にしてJ.バ一デイ一ン (1956, 1972年),F. C.フランク(専門:固体転位論), N. F.モット(1977年), L. E. F.ネ一ル(1970年)博士らが座っている.筆者も含めて「固体物理」の読者にとっては大変なじみ深いそうそうたる人物たちであり,力ッコ内の年にそれぞれノ一ベル物理学賞を受賞している.写真後方には「ネ一ル博士を囲む磁性討論会場」,「モット,フランク博士を囲む結晶塑性討論会場」の立て看板が見られる.送られてきた写真にはフランス語で,「1953年9月の国際理論物理学会議の後に東北大学金属材料研究所を訪問」と記されており,外国人研究者以外の写真に写っている日本人の方々の名前も一部記されていた.ト一レンス博士のメ一ルには,「この写真に写っている人物で名前が判明しない方が5名いる.それが誰なのかわかるだろうか」というものであった.5名の方というのは,前列右端,後列左端,そして後列右端からの3名である.撮影からほぼ60年が経過し金研内でも当時の様子を直接知る人はおらず,渡辺教授から金研創立百周年記念事業委員会の事務局あてにこのょうな人探しの依頼があったことが本稿の発金属材料研究所本多記念館正面玄関前での集合写真(敬称略)(1953年9月29日):モット,ネ一ル,フラソク,バ一デイ一ソにょる討論会の前に撮影された.写真に写っている日本人は,金研の教職員と外国人らに同行した方々(谷,永宮,橋口)である.グルノ一ブルからの問い合わせで不明な方であったのは,谷,鈴木平(のちに東大物性研所長),高木,仁科,藤田の各氏.背景の玄関周辺の様子は現在もまったく変わらず同じである.