浮遊粒子状物質測定法の推移一相対濃度測定法から等価測定法ヘ一

摘要

石炭燃焼の時代には、硫黄酸化物と並んで浮遊粉じんが大気汚染の主体であり、健康影響の主な要因物質であった。浮遊粉じんは固体物質の破砕に伴う物質の他に、化石燃料の燃焼過程から発生するミストを含む、物理的にも化学的にも多様な組成が含まれている。また、デイ一ゼル自動車から排出される黒煙も、大都市を中心に汚染の要因となっている。浮遊粉じんは、視程の低下や建築物の汚染など生活環境を阻害している。浮遊粒子状物質の健康影響は、大気中の粒径 10 μm以下の粒子は沈降速度が遅く長時間滞留することや呼吸にょり取り込まれ気道おょび肺胞に沈着して呼吸器に影響する。こうした見解と二酸化硫黄等のガス状汚染物質の複合的な影響など総合的な疫学調査の解析から、昭和47年2月に設定された環境基準は1時間値の1日平均値0.1mg/m~3以下かっ、1時間値が0.2 mg/m~3とされた。このときに「浮遊粒子状物質とは、大気中に浮遊する粒子状物質であって、その粒径が10 μm以下のものをいう」と定義され、これまで浮遊微粒子、浮遊粉じん、ダストなどと呼ばれていたものが統一された(生活環境審議会浮遊粉じん環境基準専門委員会, 1973)。環境基準設定までの大気粉じんの測定方法は、降下ばいじん計や粗大粒子を含んだ大容量ろ過捕集機(ハイボリウムサンプラ一)が主体として実施されてきた。環境基準として設定されている、1日平均値と1時間値が測定可能な測定法の開発、安定した状態で標準物質の供給が困難な粒子状物質の基準となる測定法の確立が必要となった。作業環境分野での粒子状物質測定の方法など参考に検討された。本講は、検討過程や課題等にっいて解説する。