医療ヘの水素利用

摘要

水素分子（以下，水素）は，哺乳動物の細胞内では不活性ガスとして挙動すると考えられてきた.2007年に筆者らは，水素が細胞中の酸化力が強い活性酸素種と活性窒素種を消去すること，ならびに水素が酸化ストレスに対して細胞防御機能を有することをNature Medicineに発表し，従来の概念を覆した~(1)). それ以来，主に病気のモデル動物を用いて，水素の治療効果や予防効果が調ベられ，350 を超す論文が発表されている.これらの論文では，ほぼすベての臓器で直接的あるいは間接的に後述する酸化ストレスが関与する病気のモデル動物に対して水素摂取に効果があることが示された.さらに，水素には炎症作用やアレルギ一作用を軽減するなどの多くの機能があることが判明した.さらに，エネルギ一代謝を活性化することも明らかにされた. 従来の医薬品の概念では，特定の臓器に特定の効果効能を発揮するものと考えられていたので，水素の生体内作用は概念的に異なる~(2,3)).