触覚受容特性を考慮した受動的6指分散点字方式の最適刺激呈示評価: 盲ろうや点字初心者への情報伝達システムに向けて

摘要

筆者らは，放送でサービスされる多様な情報や災害時の情報を，視覚に障害のある人に伝える統合的な情報受信端末を開発している．その中で，中途失明などの点字の初心者や盲ろう者にやさしく文字情報を伝えることを目指した6指分散点字方式を提案している．本研究の目的は，6指分散点字方式の点字認識率の向上と高速な情報伝達を可能とする最適な刺激呈示法の指針を得ることである．本論文では，種々の刺激が短時間の刺激呈示における点字の認識率に及ぼす影響を把握するため，以下の心理物理評価実験を行った．実験1では，皮膚に分布する皮膚機械受容器の特性を考慮し，1指内の指腹に振動や圧刺激，時間差刺激など異なる刺激を与えた場合の点字認識率の評価，実験2では，触覚のマスキングやファントムセンセーションの影響の軽減を目的に，6指間に時間差がある刺激呈示条件における点字認識率の評価を行った．その結果，凸刺激が振動刺激よりも認識率が高いこと，6指時間差刺激による認識率の向上は少ないことなどが分かった．また，指腹で仮現運動を感じる凸刺激の呈示法が他の条件と比較して有効であることを示した．更に，皮膚の機械受容特性の観点より指腹への刺激呈示法と正答率との関係を考察し，6指間の各種刺激呈示法について点字の誤認識の原因を解析した．