窒化皮膜処理による純チタン仮の多段深絞り加工における焼付き防止

摘要

純チタン容器は高耐食性を有するため，工業製品として普及が期待できる．しかしながら，深い純チタン容器の成形では深絞り加工を繰り返すため，焼付きが発生しやすく，成形が困難である．純チタン板の深絞り加工における焼付き防止港としては，純チタン板の酸化皮膜処理，アルミ青銅ダイスなどが報告されている．筆者らは酸化皮膜処理された純チタン板を用いて，潤滑剤およびダイス材料を最適化して多段深絞り加工において焼付きを防止し，極深純チタン容器を成形した．酸化皮膜処理は，活性である純チタンの新生面を直接ダイスに接触させないようにするものであり，酸化皮膜を強固に純チタン板に付けることが重要であり，陽極酸化と大気酸化皮膜処理の効果を調べた．酸化皮膜処理は多段深絞り加工の焼付き防止に有効であるが，皮膜処理を成形メーカーが行うと設備的に大きな負担となる．そこで，成形メーカーにおける皮膜処理工程を省略するために，市販されている表面処理された純チタン板を用いることを考え，意匠材料として使用されているカラー純チタン板を多段深絞り加工した．カラー純チタン板は陽極酸化皮膜処理によって表面に膜を付けており，膜の厚さを変化させることによって色を変えている．カラー純チタン板は多段深絞り加工の焼付き防止に有効であることが分かった．カラー純チタン板は成形メーカーの設備負担を軽減するが，処理を行っていない純チタン板よりも値段が倍ぐらいになり，価格の上昇が問題になる．そこで，価格の低い新たな表面処理板を考える．純チタン板は圧延後焼なまし処理されるが，窒素雰囲気で処理を行うと表面に窒化皮膜が形成され，表面処理された板材になる．窒化皮膜処理は陽極酸化皮膜処理よりもコストを低くできる可能性がある．