冷間タンデム圧延における片テーパワークロールシフト·クロスミルのエッジドロップ制御特性

摘要

冷間圧延における圧延材の寸法精度に関する要求はますます厳しくなっている．特に，飲料缶などに用いられる缶用鋼板では，軽量化のために薄肉化が進んでいるが，深絞り加工での割れ発生など2次加工工程での問題から，0.2mm程度の製品板厚に対して数ミクロンオーダーでの板厚精度が要求されている．そのため，鋼板の両板端部で板厚が急激に減少するエッジドロップを改善することは極めて重要な課題である．エッジドロップ制御のために，従来より片テーパワークロール(WR)シフトミルやクロスミルが使用されている．これらは実機冷間タンデム圧延機において，複数スタンドに導入されているのが一般的である．特に厳格な板厚精度が要求される場合には，全スタンドに片サーパWRシフトミルを導入し，全長·全幅にわたって板厚精度を保証している例も報告されている．一方，設備費用の低廉化のために，エッジドロップ制御機能の少スタンド化を図りつつ，大きなエッジドロップ制御効果が得られる技術が強く望まれている．筆者らは，従来ミルの基本的なエッジドロップ低減特性の検討を行い，エッジドロップ低減効果の比較とその機構について明らかにした．そして，新しいエッジドロップ制御方法として，片テーパWRシフトとクロスを組合せた片テーパWRシフト·クロスミルの適用を提案した．実験室規模の圧延実験により，エッジドロップ制御の基本特性を調査し，片サーパWRシフト·クロスミルでは大きなエッジドロップ制御能力を有することを示した．片テーパWRシフト·クロスミルを冷延ミルに導入した例は報告されておらず，実機ミルでの制御効果は未知である．本報では，実機6スタンド冷間タンデム圧延機の第1スタンドに片サーパWRシフト·クロスミルを導入し，エッジドロップ制御ゐ実機特性について述べる．まず，熱間圧延後のエッジドロップを有する圧延素材を用いて，単スタンドでのエッジドロップ低減効果を調査した．そして，6スタンド冷間タンデム圧延機においてエッジドロップ制御効果が最も大きい第1スタンドでエッジドロップ制御した場合の各スタンド出側でのエッジドロップ挙動について調査した．