燃料·排出権·卸電力の市場価格変動リスクの計測

摘要

電気料金の安定のために，電力会社としては，燃料コストの変動リスク低減のための対応策をとったうえで，燃料費の高騰に冷静に対応することが求められている．これまでも安定確保を優先させた長期契約での燃料調達は，一定のリスク·ヘッジの役割を果たしてきた．しかし，今回の大震災後のように，急激に増える燃料需要を短期的な需給バランスにより価格が変動するスポット市場で調達する場合，より効果的なリスク·ヘッジの対応策を講じることが重要となる．本稿では，燃料費の変動リスクの計測について基礎的な理論と，実際のデータを用いた分析例について紹介する．本稿の構成は以下のとお力である．まず，第2章では，火力発電事業のリスク要因について述べる．つぎに第3章で，燃料費の変動リスクを計測するための理論および大震災前後のデータを用いた分析例について述べる．第4章では，まとめと今後の展望を述べる．