クロムまたはモリブデンを含な低合金球状黒鉛鋳鉄の炭化物

摘要

約3mass％以下のCrあるいは約2mass％Moを含む低合金球状黒鉛鋳鉄の鋳放し材中に存在した炭化物を調べ，下記の結論を得た．1）約0.5～3mass％Crを含む低合金球状黒鉛鋳鉄中の炭化物はR_3Cが品出炭化物及びパーライト中の炭化物として存在した．2）約2mass％Moを含む低合金球状黒鉛鋳鉄の炭化物はFe_3Mo_3Cが晶出炭化物，Mo_2Cは析出炭化物，Fe_3Cはパーライト中の炭化物として存在した．3)本研究に用いた肉厚約75mmY型ブロックの場合，冷却後の炭化物は平衡状態図に見られる安定な炭化物（Cr_7C_3，Cr_3C_2あるいはMoC）でなく，凝固時及び冷却途中に析出した中間相の炭化物が室温で残留した．4）晶出炭化物あるいは冷却途中に析出する中間相の炭化物はinsitunucleationにより安定な炭化物へ変態するものもあるが，この変態は炭化物中にCrあるいはMoが濃化する必要がある。したがって，室温で安定な炭化物が析出していなかった原因は本研究に用いたY型ブロックの冷却時間が平衡状態よりも短かったことによると考えられる。