（Ti，V）N膜コーテッド超硬合金工具の切削性能-ステンレス鋼切削における工具摩耗

摘要

本研究では, 超硬合金K10種を母材とし, Ti/V原子比を変化させた（Ti, V）N膜をPVD法によりコーティンダした工具の被膜特性について調べ, さらにSUS310S材の外周旋削を（Ti, V）N膜コーテッド超硬合金工具で行い工具摩耗を調べた。 得られた主な結果は, 次の通りである。 （1）（Ti, V）N膜コーテッド超硬合金の硬度は，Ti75V25N膜が最も高く, Ti25V75N膜が最も低かった。 しかし，TiN膜コーテッド超硬合金に比べれば, いずれの（Ti, V）N膜も高硬度であった。 （2）（Ti, V）N膜コーテッド超硬合金の密着強度は, Ti75V25N, Ti25V75N膜が最も高く，Ti50V50N膜が最も低かった。 しかし, TiN膜コーテッド超硬合金と比べれば, いずれの（Ti, V）N膜も密着強度は高かった。 （3）送り，切込みをやや大きくしてSUS310Sを切削した場合, Ti75V25N, Ti25V75N膜コーテッド超硬合金工具の摩耗進行が遅かった。 これは, この切削条件では，工具の主な摩耗形態は凝着摩耗のため, 密着強度の大きい(Ti, V)N膜コーテッド超硬合金工具の摩耗進行が遅くなるためと考えられた。