材料と材質感

摘要

本誌の読者諸氏はご承知のことと思うが，拙著『オーケストラの楽器たち』は本誌への連載「楽器さ材料」を単行本にまとめ直したものである。 アマチュアオーケストラにいて奏者の皆さんが持っている楽器，例えば金管楽器の色だけ見てもひとつひとつが微妙に違うことに気づき，楽器と材料との関わりに興味を覚えるとともに，材料の選定理由が当然製法に深くかかわっていることから，製作現場を訪ねて見たいと思ったことがそもそもの始まりであった。 見慣れないものを目にしたとき，「何でできているのか」，また「どうやって作ったのだろう」という2つの疑問が浮かぶのは，程度の差こそあれ誰しも同じであろう。 X線だのスペクトルだのという高度な科学技術を駆使する現代の分析は別として，ごく素朴には，われわれは見たり（視覚），触ったり（触感）あるいは持ったり（比重）してその材質を見極めようとする。