高分子結晶のやさしい話（第5回）：結晶成長の周辺

摘要

効果的に造核剤を使うことで結晶化温度を制御し，ある程度は物性を変えることが可能である．原料の溶融冷却加工で，造核剤を添加した場合には，結晶（球晶）の成長が冷却速度にほとんど依存しないために，製品の表面，内部での比較的サイズの揃った，しかも均質で歪みの少ない球晶ができる．一方，造核剤を添加しない場合には，加工過程で製品の内外部に冷却速度の違いができるため，球晶の大きさに“むら”が生じ，厚い材料ほど不均質の度合が増す．均一核となる繊維状造核剤を入れれば，核に平行に分子鎖が収束して軸の揃った結晶が成長するはずで，この際“ずり応力”を加えれば，次に話す配向結晶化類似の効果が得られよう．