熱電変換材料への期待

摘要

異種導電体（金属あるいは半導体）を接合し，2つの接合部に温度差を与えるとその温度差と材料の物性億に依存した起電力が発生するという効果（ゼーベック効果）を用いた熱竃発電技術は，エネルギーの有効利用の観点からその場で規模や熱源の種類によらず発電できることから，省エネルギー技術の一つとして近年その実用化への期待がかなり強くなってきている．また，この異種接合導電体に電流を流し，その接合部間に温度差を発生させるベルチエ効果を利用した熱電冷却技術は，精密温度制御性を生かして半導体製造プロセスの基盤技術にまで成長すると共に，その局所冷却性や簡便性から情報産業や食品産業，健康医療·レジャー産業にまで幅広い応用が展開されている．熱電変換技術の歴史は古く，原理の発見以来，180年余を経過している．今日の熱竜冷却技術の基礎となったビスマス·テルル系材料の固溶体化による飛躍的性能向上を達成した，J. Goldsmid博士の論文発表50周年に2004年があたるということからも判るように，熱電変換産業の進展の鍵は言うまでも無く熱電変換材料の高性能化である．良い素材ができればそれを生かす電極接合技術を含むモジュール化技術や，熱取得や，熱放熱技術を含むシステム化技術は，たちどころに確立されるとも言われている．現実には，高性能ビスマス·テルル系材料が見出されて，それが産業化されるまでには約10年近くを要しているのであるが，近年は当時とは異なりエレクトロニクス産業の進展により，めっき技術，はんだ技術，溶射技術，マウント自動化技術や品質管理·信頼性技術は大いに成熟し，新しい環境条件への対応も異分野への展開もそれほどの障壁でもなくなってきているといえる．