Cr-Mn-Niオーステナイト系ステンレス鋼の機械的性質と加工誘起マルテンサイト変態に及ぼす合金元素の影響

摘要

5種類のCr-Mn-Ni鋼の冷延板の組織，機械的性質およびオーステナイト安定度に及ぼす合金元素の影響について調査し，成分設計の指針となる特性と成分の関係を検討した。 そして，以下の結果が得られた。 (1) Cr-Mn-Ni鋼の組織図は，計算フェライト量(α)とマルテンサイト変態を表す指標((Ni{sub}(eq)){sup}(for Ms))を用いることによって得られた。 そして，Cr-Mn-Ni鋼の冷延焼鈍板において，オーステナイト組織を得るためには，α≦0％で，(Ni{sub}(eq)){sup}(for Ms)≧30を満たす成分でなければならないことが明らかとなった。(2) Cr-Mn-Ni鋼の0.2％耐力と成分の関係式を得たが，それぞれの合金元素の影響度はCr-Ni鋼のそれと大きな違いは認められなかった。 (3)引張加工によって生じる加工誘起マルテンサイト変態量と成分の関係から，Cr-Mn-Ni鋼のオーステナイト安定度を示すNi当量([Ni]{sup}(eq))が得られた。 そして，エリクセン値を最大にする[Ni]{sup}(eq)が19～20に存在し，21以上ではほぼ一定となり，加工性の指標として，その有効性が示された。