水素社会の実現に不可欠な水素製造·利用技術：アモルファス合金水素分離膜の開発

摘要

水素はあらゆる元素のなかでもっとも小さい。 したがって十分に目の細かいふるいがあれば，それを用いて水素を含む混合物から水素のみを選り分けることができるだろう。 これを実現しているのが金属膜である。 ふるいの目は金属原子間の隙間であり，原子レベルで人工的にコントロールし得るもっとも小さな隙間である（図1）。 水素などの原子がふるいの目を通り抜ける際の通りやすさの指標は拡散係数である。 たとえば鉄の場合300℃における炭素や窒素の拡散係数が10{sup}(-14)m{sup}2/sであるのに対し，水素は10{sup}(-8)m{sup}2/sと遥かに大きい。 このように水素の拡散係数がほかの原子に比べて何桁も大きいのは金属一般に共通することで，金属原子の隙間が水素ふるいとして確かに機能していることが理解できる。