技術士シリーズ⑤植物保護と技術士ー作物残留試験からみる農薬適性使用と技術士の役割

摘要

わが国の農業·農村は食料の安定供給という重要な使命を担い、自然環境や国土保全などの多面的な機能を発揮している。 一方で、BSE問題に端を発し、無登録農薬の残留問題や食品の虚偽表示問題等に関連して、「食」と「農」に関するさまざまな課題が顕在化している。 そのような中で、農産物の品質として何が求められているかを考えるとき、安全と安心を確保できることがひとつの重要な要素になってきている。 安全·安心が確保された農産物を供給するために、農業生産の場では病害虫防除の手段のひとつである農薬の扱いが問題になる。 農薬使用については賛否両論があり、なかなか賛否の妥協点を見つけられずにおり、今後、植物保護分野の技術士には、このあたりの課題解決への期待が高まると考えられる。 本稿では農薬の作物残留に焦点を当て、どのような手法で作物残留性の判断をし、それによってどのように農薬の適正使用を確立し、安全·安心を確保するかについて概説し、その取り組みの中で技術士の果たせる役割について考えてみたい。