電位差法及び渦電流探傷法による非破壊的な定量評価方法：電位差法による裏面応力腐食割れのモニタリング

摘要

最近の動向として，原子力安全·保安院は，総合資源エネルギー調査会原子力安全·保安部会の「検査の在り方に関する検討会」における検討結果を踏まえ，原子力発電設備における新しい検査のあり方に関する報告書案をとりまとめた。これによると，現行の13ヵ月に1回の定期検査制度を見直し，個別プラントの設備特性や運転計画を踏まえた，よりきめ細やかな検査制度に2008年度を目処に移行するとしている。 この新しい検査制度では，事業者がプラントごとの特性を踏まえて時間計画保全と状態監視保全を最適に組み合わせた「保全プログラム」を策定し，国がそれを事前確認するとともに，停止中·運転中を問わず検査を実施することとなる。 このように，状態監視（モニタリング）技術の必要性はますます大きくなってきている。 非破壊検査手法の一種として，電流を検査対象に印加し，きずの存在による電流経路の変化を電位差の変化として計測することで，きずの検出と評価が可能な電位差法あるいは電気抵抗法と呼ばれる手法がある。電位差法は用いる電流の種類から直流電位差法と交流電位差法に大別される。 また，交流電位差法の一種として誘導電流を用いる集中誘導型交流電位差法が開発されている。 表面きずに対する直流／交流電位差法の原理図を図1に示す。 電位差法は，電流供給及び電位差測定ワイヤのみの極めて単純なセンサを用いる手法であり，すでに実験室においてはSCCき裂進展の高温高圧水環境下におけるモニタリング手法として利用されている。 このことから実機環境下におけるきず，具体的にはSCCき裂のモニタリングへと適用可能であると考えられるが，これまで系統的な研究はほとんど行われていない。 本解説では，電位差法に基づく裏面SCCのその場連続モニタリング技術の開発のため，測定物に印加する電流の種類が異なる3つの電位差法を用いた裏面SCCき裂進展モニタリングを実施し，それぞれの結果を比較した結果について報告する。