電力取引リスク管理のための市場価格データ分析技術

摘要

2005年4月に，わが国において日本卸電力取引所（JEPX）が開設され, 卸電力の市場取引が開始された。 卸電力市場は，翌日渡しの電力を30分単位で取引するスポット市場と，将来の受渡し期間を通じて出力一定の電力を受け渡す先渡し定型市場，そして先渡し掲示板市場から成る。一般に電力市場価格の変動は非常に大きく，しかも電力貯蔵が基本的に不可能であることから，取引量が増大していくとそのリスク管理が重要な課題となる。 取引リスクの大きさを表す指標（リスク指標）としては，例えば，バリューアットリスク（VaR）や収益アットリスク（EaR）がある。 VaRやEaRは，所有する資産の価値や事業収益に対して，将来の定められた時点におけるこれらの変動の信頼区間の中で想定される，最大の損失として定義される。 そしてこれらのリスク指標は，最悪の事態に備えるべき資本（リスク資本）の大きさの目安となる。