C-8Cr系高温焼戻し冷間工具鋼の経時寸法変化におよぼす残留オーステナイト安定化の影響

摘要

1C－8Cr系冷間工具鋼の高温焼戻心後の経時寸法変化に関してその残留オーステナイト挙動をもとに検討し以下の結果を得た．（1）高温焼戻し後に微小量の残留オーステナイトが残存する焼戻し条件では，残留オーステナイトの不安定化により経時寸法変化量が，低温焼戻しよりも大きくなる．（2）高硬さを維持し経時変化を低減させるためには623K～753Kの追加焼戻しが安定化処理として有効である．（3）残留オーステナイトの不安定化は高温焼戻し保持中に残留オーステナイトの固溶C量変化が生じ，焼戻し冷却時のマルテンサイト化によりさらに残存するオーステナイトに歪みを加えることによる．（4）高温焼戻し後の安定化熱処理の役割とじては，おもに残留オーステナイトの歪みを低減させることである．（5）サブゼロ処理後の残留オーステナイトはむしろ安定性が低下する．経時変化を少なくするためには安定化処理な　 どを加える必要がある．