宮古島?天川洞の後期更新世堆積物から発見されたイシガメ属(カメ目イシガメ科)の新種

摘要

琉球列島南部の宮古島にある,天川洞という洞窟の後期更新世堆積物から発見されたカメ類化石 3点にもとづき,イシガメ属の新種を記載した.これらの化石のうち2点(腹甲の前半部と背甲の項骨板)は先行研究で,琉球列島内では八重山諸島にのみに現存するミナミイシガメであると,予察的に同定されていた.本研究でこれらに加え未報告の1点(左第3縁骨板)もあわせて検討したところ,実際にはミナミイシガメではなく,本州,四国,九州と種子島に分布する現生種ニホンイシガメ,および本州の中部更新統から知られる絶滅種ヤベイシガメに,より類似することが明らかになった.しかしながら,天川洞のカメは腹側面において内腹甲が左右の胸骨板の縫合部よりも長い点,また背側面において喉甲鱗板と肩甲鱗板の間の鱗溝の内側で前後に伸びる明瞭な溝を持つ点で,これら2種のいずれとも異なっていた.今回の発見は,宮古諸島の陸生動物相の独自性をさらに強調するものである.