被驗者の権利と倫理指針

摘要

「疫学研究に関する倫理指針」（疫学研究指針） 及び「臨床研究に関する倫理指針」（臨床研究指 針）2)の見直しに関する「中間取りまとめ」（平成25年9月）3)に対する意見募集が行われた（提出 期限平成25年10月23日）4). 「中間取りまとめ」 の個々の論点について正すべき事項があるが，本 稿では，その課題設定の自己矛盾ともいえる根本 的な問題点とその解決策についてのみ述べる.第一に，科学研究の対象者の権利保護は国会審 議を経て国が保障すべき基本的人権の一つである とともに，第二次大戦中の人体実験に対する 判決を踏まえた国際法および戦後日本の人権侵 害と薬事行政の過誤を検討した諸委員会の結論に 示された課題であり,その課題は今回両倫 理指針の見直しに関する委員会に委ねられたはず である11).ところが同委員会ではこの課題はまつ たく議論されなかった.さらには，行政指針に関 する審議の場で，憲法上保障された学問の自由と いう権利と拮抗する研究対象者の人権の確立を検討することはdue processに適わない.