脂肪注入による豊胸に対する超音波検査の有用性(特に術前スクリー二ングと術前/術中処置に関して）

摘要

背景：美容外科における豊胸術は現在ヒアルロン酸、シリコンバッグ、自家脂肪移植による豊胸が主流となっている。術前 に画像で乳房の状態を診断することは重要であるが、実際に画像診断を行っているクリニックは少ない。対象と方法：当院で自家脂肪移植による豊胸を行った108例を対象とし、術前の乳腺のスクリーニング、豊胸既往例につい ては術前の注入脂肪、バッグ、ヒアルロン酸の状態を診断し評価を行った。結果：全108例中22例（20.4%)で、（豊胸既往の有無を問わず）乳房超音波診断ガイドラインにおけるカテゴリー2の所 見を認めた。豊胸の既往の無い患者の一人で増大傾向にある線維腺腫を摘出した。豊胸の既往のある患者は54例であつたが、 他院にて自家脂肪移植による豊胸例は19例中16例（84.2%)に腫瘤を認めた（嚢胞性病変13例、充実性病変3例）。そのう ち大きな嚢胞性病変を持つ1例は超音波下に穿刺吸引、また、触診で触れる充実性の腫瘤を持った症例1例については超音波 下にVASER?を用いて粉砕処置を行った。バッグ揷入例は26症例で、術前の超音波検査でバッグの正確な位置(層)を確認 し、全症例腋窩から抜去できた。無症状の10例中4例に超音波で軽度のバッグの変形を認め、カプセル拘縮の初期と診断した。 ヒアルロン酸豊胸例は9例中8例（88.9%)にヒアルロン酸の残存を認め、残存量が多かった5例はエコー下に溶解吸引した。結論：コンデンスリッチ豊胸前に超音波検査を行うことで乳腺のスクリーニングだけでなく、豊胸既往例の腫瘤の診断、処 置など可能となり、より質の高い医療が提供できると考えられた。