静水圧性のよい高圧力液体媒体の開発

摘要

有機伝導体の高圧研究を始めてみると，日本で無機物に用いられていた高圧物性方法をそのまま当てはめようとすると，脆弱な有機物の試料が壊れてしまうことがあり，有機伝導体に適した圧力セルの開発，媒体の選択など，多くの高圧発生要素を自己開発せざるを得なかった。磁場や低温と組み合わせるにはφ25程度のピストンシリンダーが適していると考えた（1980年代，当時のピストンシリンダーはφ40-50と太くて，200mm程度に長いものが主流だった）。研究を進めるうちに，無機物では問題にならないような媒体の固化時における圧力変化でも，有機物は壊れてしまうことがあり，試料に“優しい”媒体を探求することから始める必要性を感じた。これらを克服した媒体はその後，低温での高圧力の質の良さが，無機物の研究者にも好まれ，特にde Haas van Alphen効果の研究者達に愛用されることになった。ここでは圧力媒体の開発について述べる。