超臨界流体中での拡散律速イオン反応における特異挙動

摘要

超臨界流体の溶媒としての利用（たとえばの総説）は，1960年代化学工学の分野での避臨界流体による抽出の研究等を皮切りに，以降，盛んに行われてきた。 近年では，反応溶媒としての超臨界流体の利用も始まり，特に超臨界水の分野では種々の特異的反応が報皆されていて，今後の発展が非常に期待されている。 それに比べ，本特集のテーマである拡散現象を含む反応の基礎過程に関わる現象の物理化学的研究は立ち遅れた感を否めなかったが，1980年代の後半から非常に多くの物理化学者がこの問題について取り組むようになり，現在までに多くの研究が行われてきた。 それらの中でも，今回の研究の動機ともなった「超臨界流体中での局所密度増大」に関する研究は，その中心的なものであるといえよう。