化学物質管理とリスク·コミュニケーション

摘要

現在の私たちの生活は，さまざまな人工的につくられた化学物質によって支えられている。 衣類，化粧品，洗剤，日用雑貨品，パソコン，自動車，食品など，あらゆる分野で化学物質が使用されており，好き嫌いとにかかわらず，化学物質なしの生活は考えられなくなっている。 しかしながら，10万種以上もあるこれらの化学物質による人体や環境への影響を，従来のように1つひとつ評価し基準値を設定して管理する方法ではもはや手遅れとなる可能性が高くなってきており，この現状を打破し環境を改善する方法として，自主管理が求められている。 この自主管理はISO14001に求められていることと同じように，リスクを評価し，対策を計画し，実施し，結果を評価することが必要である。また，その結果を公表し社会の認知を受けることが求められている。 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」（以下「化学物質管理促進法」と略）には，この考え方が取り入れられており，排出量や移動量を届け出公表し，公表されたデータを利害関係者で議論し，地域の環境改善の対策をとることが最終的な法律の目的となる。 この議論の過程を，リスク·コミュニケーションという。