鉱物資源政策の現状と今後の課題

摘要

我が国の非鉄金属資源産業は，永きに渡り我が国経済の中枢産業として生産·輸出·雇用を支えてきた。 昭和の後半以降は，我が国経済の拡大に伴い，業態も鉱山業から製錬業へと次第に主体を変化させ，現在まで銅·鉛·亜鉛等のベースメタル，金·銀等の黄金属，あるいはレアメタル·レアアースなど，高品質の資材供給を担ってきている。 しかし，世界の政治経済情勢の変化，我が国経済の変革を引き起こすボーダーレス化，為替変動，人々の意識変化などを受け，非鉄金属資源産業をとりまく環境も，需要の低迷，鉱石確保，購入条件の悪化など大きな変化を迎えている。そのような中，世界的な業界再編の流れに対応し，企業体質を強化し，鉱山開発や製錬の海外展開等グローバル化に適切に対応することが求められている。その一方，鉱物資源はITをはじめとする我が国産業の活動や国民生活に不可欠な基礎的素材であり，その安定供給は従来にも増して重要な課題となっている。 そのような中，鉱物資源政策の着実な実施に向けて，1）鉱物資源の安定供給確保への取組として，知的基盤である基礎的地質情報の収集整備·提供，2）持続可能な発展を可能とするための取組として，循環型社会の構築（リサイクルの推進等），環境保全対策の着実な実施，3）行政改革への取組として，民間と行政の役割分担の明確化，特殊法人等の改革，が求められている。