大うつ病性障害患者における抗うつ薬の治療反応に対する5-HT1A受容体遺伝子多型の影響

摘要

うつ病治療における抗うつ効果の個人差には遺伝的要因が何らかの役割を果たしていると考えられている．それら遺伝子因子のなかでも，抗うつ薬のターゲットサイトであるセロトニン神経系にある5-HT1A遺伝子（以下HTR1A）は，この個人差に影響しうる興味深い因子である．そのHTR1Aのrs6295C／G遺伝子多型はHTR1Aの機能や表出に影響を与えることがわかっている．さらにこの多型はHTR1Aにある他の多型と強い連鎖不均衡（以下LD）をもっため，rs6295以外の多型がこれら機能的な影響に寄与している可能性も示唆される．そこで我々は，HTR1Aの強いLD関係にあるいくつかの遺伝子多型と日太人大うつ病性障害患者137名におけるSSRUSNRIの抗うつ効果との関連を検討した．結果，rs100042486C／C（P＜0．0001），rs6295G／G（P＜0．0001），rs1364043T／T（P＝0．018）遺伝子多型保持者が良好な治療効果と有意に相関していた．さらに，これら3つの遺伝子多型のマイナーアレルホモ接合体保持者は，うつ症状の改善とより強く相関していた．また，我々は過去の4つの論文において認められたrs6295C／G多型の判定方法の間違いについても指摘した．この研究は抗うつ効果に対するHTR1AのrslOO42486C／T，rs1364043T／Gの各多型，そしてrs10042486-rS6295-rs1364043多型のコンビネーションが与える有意な影響を示した世界初の報告であり，今後の抗うつ薬の薬理遺伝研究に対し興味深い情報を提供できるものである．