急速拡大装置併用における上顎前方牽引時の縫合部に生じる 力学的解析一三次元有限要素法一

摘要

本研究では乾燥頭蓋より三次元有限要素法を用いて顎顔面頭蓋の三次元有限要素モデルを作製し，急速拡大装置 併用における上顎骨前方牽弓I時に縫合部に生じる力学的解析を行った.実験対象として乾燥顎顔面頭蓋のCT画像を用い，MECHANICAL FINDERにて解析を行った.荷重条件は第一小臼歯 部と第一大臼歯部からそれぞれ咬合平面に対して，10°, 20°, 30°, 40°，並びに50°方向へ牽引した.荷重の大きさは急 速拡大装置を想定し，第一小臼歯，第二小臼歯，第一大臼歯へ頰側方向にそれぞれ1.0 N，また前方牽引を想定し前下方 へ片側5.0 Nの荷重を負荷し解析した.結果，急速拡大装置を併用した上顎前方牽引装置使用時，頰骨上顎縫合部により大きな応力を加えたい場合には，第一 小臼歯部から牽引するよりも第一大臼歯部から牽引する方が有効である可能性が示唆された.牽引方向は上顎骨をより counterclockwise rotationさせたい場合には，10°から20°の牽引方向を選択することが有効である可能性が示唆された.