生体および脳死体肝移植の現状と将来的展望

摘要

脳死臓器移植法施行後3年,生体肝移植実施後10年経過し着実にわが国で肝移植の実績が蓄積されている.このような中で本シンポジウムで肝移植の現状と展望が討論された.基調講演でベルリンのPeterNeuhaus教授は,今後わが国で適応疾患として大きな課題となると予測される肝癌に対する肝移植の実績と適応についての考え方が示された.氏は,肝外転移と門脈内腫瘍血栓症例以外の進行癌(IVa)で5年生存率の良好な成績を示し,今後も適応とするとした.また予後予測に腫瘍生物学的因子の検討も必要と強調した.基調講演の北大の藤堂教授は,アンケート調査を実施して,詳細なわが国の成人生体肝移植308例の検討結果を述べた.現在72.4%の生存率で死因の分析,血液型因子,グラフトの影響,疾患による成績等,今後の生体肝移植の展開にとって重要な報告がなされた.また氏はわが国の脳死ドナーの現状を日本臓器移植ネットワークのデータ一に基づいて報告し今後の脳死肝移植の将来について氏の考え方を述べられた.