指腸乳頭部癌に対する縮小手術の適応と成績 経十二指腸的乳頭切除術と乳頭部十二指腸部分切除術

摘要

要約：教室で切除した250例の乳頭部癌のうち，縮小手術として経十二指腸的乳頭切除術を 行った11例（pDuO ： 9例，pDul：2例）と乳頭部十二指腸部分切除術を行った8例（pDuO ： 3例，pDu1:1例，pDu2:4例）を検討した。術前生検で腺腫の診断であった10例は術後病 理ですべて深達度はpDuOであつたが，腺癌の診断であつた9例中7例はpDu1以上であつた。 術後合併症は前者で1例（9%)，後者で4例（50%)に認めたが，術死，在院死は認めなかつ た。乳頭切除の11例は全例無再発生存していたが，乳頭部十二指腸部分切除ではpDu2のう ち2例が再発し1例が8力月で死亡した。十二指腸乳頭部癌に対する縮小手術は，基本的にリ ンパ節転移のないpTlが適応である。しかし近年の診断技術の向上でも術前にOddi筋浸潤 の有無を診断することは困難である。一方，乳頭部腫瘍では腺腫と腺癌が混在する症例も多く， このような癌は腫瘤型で高分化な腺癌であり浸潤傾向に乏しい。このため根治切除として縮小 手術を適応する場合には，現時点では術前生検で腺腫が得られている症例が最適である。乳頭 切除術と乳頭部十二指腸部分切除術の選択は腫瘍の胆管，臈管上皮内進展の程度によって決定 される。後者では，前者と比較して胆管，臈管をより上流側で切除することが可能であり，ま た高度の胆管進展に対しては下部胆管切除を併施することにより断端の腫瘍遺残による局所再 発を防ぐことができる。