〔尿細管間質病変における間質線維化の機序〕Myofibroblastの出現と間質線維化

摘要

わが国の慢性維持透析患者数は20万人を超え，年間の新規透析導入患者数は3万人に及ぶ。 その原疾患として糖尿病性腎症，慢性糸球体腎炎，高血圧性腎硬化症で導入患者の77％を占める。 その進行抑制，寛解導入，治癒を達成することは増加の一途をたどる維持透析患者数抑制，ひいては医療費抑制への道となる。 個々の原疾患に対する治療の重要性はもちろんのこと，共通の進行機序に対する介入は有力な治療アプローチである。 進行性腎障害に共通の病理学的特徴の一つとしてmyofibroblastの出現があげられる。 腎糸球体ではメサンギウム細胞が活性化されmyofibroblastとなり糸球体硬化へと進展する。 また，尿細管間質では線維化病変に先行してmyofibroblastが出現する。 種々のヒト腎疾患で糸球体·尿細管間質のmyofibroblast発現の程度が腎不全進行への予後と関連するとの報告も数多い。本稿では，尿細管間質障害におけるmyofibroblastの意義につき解説し，現在われわれが進めているmyofibroblast形成にかかわる転写因子同定につき述べ，新たな治療ターゲットとしての可能性を議論したい。