集簇性の乳頭状隆起を呈した腸管子宮内膜症の1例

摘要

便秘を主訴に受診した35歳女性で，特異な形態を示した腸管子宮内膜症を経験した．大腸内視鏡検査で， S状結腸に半周性のなだらかな立ち上がりの粘膜下隆起による狭窄が存在し，その上に発赤し，光沢のある，軽度浮腫状の乳頭状を与した隆起の集簇を認めた．注腸x線検査では狭窄の立ち上がりがなだらかで，粘膜下腫瘍様形態を呈することが明らかとなった．腸管子宮内膜症を疑ったが，狭窄が強く，診断的治療もかねて腹腔鏡下結腸切除術を施行した．摘出されたS状結腸には約2cmの幅で，浮腫状で，境界不明瞭な輪状の狭窄が存在し，粘膜面には発赤した2－5mmほどの乳頭状隆起の集族が存在した．病理組織学的に粘膜固有層から粘膜下層，固有筋層に子宮内股細織が侵入してお　 り，腸管子宮内膜症と診断された．腸管子宮内膜症は，本例のように子宮内膜細織が腸管粘膜内に存在すると，上皮性腫瘍様形態を呈する場合があり注意を要する．