濾過手術後に視神経乳頭形態が著明に変化した成人の外傷性緑内障の1例

摘要

目的:成人では視神経乳頭形態の可塑性が低いことが知られているが,視神経乳頭形態に高い可塑性がみられた成人の外傷性緑内障の1例を,ハイデルベルク·レテナ·トモグラフ(HRT)で経過を追えたので報告する.症例:41歳男性.右眼を打撲.視力は両眼とも0.4(1.2)で眼圧は両眼とも11mmHgであった.右眼に前房内細胞と全周の隅角解離がみられたが,前房出血はなかった. 2週間後に右眼痛と頭痛を自覚.右眼視力0.06(0.1),眼圧は50mmHgで結膜毛様充血と角膜浮腫がみられた.高張浸透圧薬の点滴と眼圧降下剤で経過をみるも効果は持続せず,視神経乳頭所見に左右差がみられ　 HRTでは陥凹乳頭面積比(C/D)(右眼0.553,左眼0.287)と陥凹容積(CV) (右眼0.548,左眼0.168)であった.受傷後5週で非穿孔性線維柱帯切除術を施行した.術後2週で眼圧は7mmHgに低下し, C/D(右眼0.122,左眼0.293), CV(右眼0.062,左眼0.170)となった.術後6か月ではC/D(右眼0.304,左眼0.292),CV(右眼0.202,左眼0.144)とも左眼とほぼ同じ値となった.結論:本症例は高眼圧の期間が短かったためと考えられるが,成人でも視神経乳頭に十分な可塑性を示す症例があり,HRTで定量的にとらえることができる.