甲状腺疾患の診断と治療一現状と展望一

摘要

潜在性甲状腺機能低下症の実態調査（網野信行）により，成人（健康診断受診者）における甲状腺機能異常を示す患者数の実態が明らかになった.甲4赚自己抗体であるthyroglobulin (Tg) 抗体またはthyroid peroxidase (TPO)抗体を示す成人者は男性で14.4% (約7名に1人），女性で24.7% (約4名に1人）で全体では21.7%に及ぶ.我が国の総人口1億2,780万人の内86% が15歳以上であるので，上記の甲状腺自己抗体を保有する割合を当てはめてみると，約2,385 万人が潜在的な甲状腺疾患(殆どが橋本病？)を有することになる.さらに潜在性甲状腺機能低下症は4.3% (474.1万人），顕性甲状腺機能低下症は0.60%,潜在性甲状腺中毒症は1.7% (187.5 万人），顕性甲状腺中毒症は0.55%と言う罹患率であり，総計約790万人が甲状腺機能異常を示すと推定される.潜在性甲状腺機能低下症ではSjLDL (low density lipoprotein;血症が起こり動脈硬化となり易ぐ潜在性甲状腺中毒症では心房細動や骨粗鬆症が起こり易いことが指摘されている.