Ⅹ.膵臓癌における浸潤転移機構

摘要

膵臓癌はと卜悪性腫瘍のなかでも極めて予後不良である.この予後を不良とする大きな要因は膵臓癌が持つ高度の浸潤性と肝転移を中心とした血行性転移である.癌細胞は転移するために増殖,血管新生の誘導,細胞解離,細胞遊走能の増強,プロテアーゼの産生,細胞接着の変化といった複数の細胞機能を変化させる.これらの機能変化に癌細胞自身あるいは間質細胞から産生される増殖因子,サイトカイン,血管新生因子,細胞接着因子,プロテアーゼなどがメディエーターとして関与し乙相互に作用しあいながら浸潤転移機構を形成している.膵臓癌の予後を改善するためには,膵臓癌の浸潤転移機構の基礎的な解析結果に基づいた新しい観点からの治療法の開発が必要である.