Proton Pump Inhibitor，Rabeprazoleが著効した幽門側胃切除術後逆流性食道炎の2例

摘要

胃切除術後の合併症の一つに逆流性食道炎がある。胃切除術後の逆流性食道炎の発生機序は，手術による下部食道括約筋を中心とする胃食道逆流防止機構の廃絶または障害，消化管の通過障害などが考えられる。 幽門側胃切除術後逆流性食道炎の病態の特徴は，酸性とアルカリ性食道炎の両者が混在する病態であり，残胃の酸分泌能力の差により症例ごとに逆流内容のpHに差が生じる。 アルカリ性食道炎の発生機序には膵酵素のプロテアーゼ活性が重要であり，胆汁は酸·アルカリ液の増悪因子と考えられる。 幽門側胃切除術後の逆流性食道炎に対し，proton pump inhibitorであるrabeprazole（ラベプラゾールナトリウム製剤，商品名；Pariet~R）投与が有効であった2例を経験した。 症例は78歳と63歳の男性であり，ともに再建はBillroth I法を用いた。 術後逆流性食道炎が認められ，メシル酸カモスタットにてコントロール困難であったためrabeprazoleを投与し著明な改善を得た。