遺伝子治療の現状と新しい展開

摘要

遺伝子治療の動きが日本でも最近活発となってきている.日本で最初に遺伝子治療が行われたのは1995年のことであり,稀な遺伝性疾患であるアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対するものであった(北海道大学で実施).次に, HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症に対する遺伝子治療(免疫力を高めることによりェイズの発症を抑えることを狙った方法:熊本大学で計画)が1997年に承認されたが,臨床研究が先行していた米国でこの方法が無効であることが明らかになったため,翌年,断念となった.その後しばらくの間,欧米で症例数が急増する一方で,日本では足踏み状態が続いていた. 1998年秋になって漸く第2例日の遺伝子治療が東大医科研でスタートし(腎癌に対する遺伝子治療), 1999年に入ると肺癌に対する遺伝子治療が岡山大学で実施された.その他にも遺伝子治療臨床研究の申請が相次いでいる.日本の遺伝子治療臨床研究もいよいよ新しい局面に入ってきたといえる.